「ベンチャーは難しい」

何をもって難しいというのか,具体的な根拠を提示せよ.
ベンチャーのみならず,企業経営の本質は基本的に単純である.材料*1仕入れ,モノを作ったり付加価値を付け,客に売る,という企業活動はどんな企業も一緒である.
ベンチャー企業を起こす際の最初の難関は,やはり資金調達である.次は販売チャネルの確保,最後は顧客の獲得,保持となる.起業後,上に挙げた難関をクリアし,一旦軌道に乗ってしまえば,後は普通の企業同様,「如何に利益を出すか」という部分に集中すればよい*2.この「如何に利益を出すか」という方針を策定する中で,新規事業の開拓や,既存商品・サービスの廃止といった,「企業内変化」も当然視野に入ることになる.変化の無い企業は淘汰される.成功しているベンチャーは,社会の変化に応じて,自分自身も変化することに成功している企業である.*3

*1:場合によっては「人」

*2:軌道に乗せることを「難しい」と感じるのであれば,それは当初の計画自体に誤りがあるか,経営者が金やモノ,情報の流れを理解できていない証拠である

*3:日本国内においては,企業が「潰れる」ことは絶対悪となっている.どういうことかと言うと,帝国データバンク東京商工リサーチといった,「信用調査会社」が提供する情報には企業名,経営者名と言った情報が載っており,ある経営者が一旦会社を潰してしまうと,その情報は即座に日本全国に広まる(というよりも,データベースに履歴が残る).そのような元経営者,特に中小零細企業を経営していたような人は,「ブラックリスト」に名前を連ねることになり,基本的には二度と銀行などからの融資が受けられなくなるのである.また,この信用調査会社による情報の中には,経営状態や取引実績を元にして作成される「格付け」情報が含まれる.大企業,およびその関連企業は,基本的にこの格付け情報が一定以上の値を持っている企業としか取引(仕入,業務委託,販売等すべての取引)をしない.それゆえ,実績を持たない新規のB2B領域のベンチャーは,孫請け,曾孫請けで仕事を獲得するか,コネ,権威(たとえば「大学」のバックアップや「教授」という立場等)を傘に仕事を獲得するしかないのである.この辺の事情も,日本のベンチャーを取り巻くマイナス要因であり,「成功している」と言われる日本のベンチャーが,B2C 領域に多い理由でもある.日本においては,ベンチャー起業家の「成功」は,起業→成功→事業売却→別会社設立 の繰り返しか,最初に設立した会社の巨大化しか有り得ないのである(最初から,100%自分の資産を利用して起業する場合は問題にはならないが,そういうことができる人間はそう多くない.)