それでも生き残っている建設業界

斜陽産業と目される建設業が,未だに根強く生き残っている理由は,相違点で最初に挙げた「建設業法」と,「地域・生活に密着した産業である」という特徴にあると思うのである.小売業,建設業といった,「実生活」に直結した業種は,企業の淘汰はあっても,業界の存在自体が無くなることは決して無い.それに対し,生活に密着していない業種,たとえば製造業の場合は,わざわざ高い国内の人件費,材料費を掛けて「モノを作る」よりも,「安い外国製の完成品を買う」とか,「海外で生産する」ほうが,消費者にとって価格面で有利になる*1ので,「体面的には国内企業」であっても,その実態は単なる輸入代理店,または設計専門のエンジニアリング企業と同じ,というパターンが増えている.また,卸売業に至っては,生産者と消費者の,コンピュータネットワークを介した直接取引が実際に行われている以上,製造者と小売業者の間に立って,マージンを稼ぐ,という基本的なビジネスモデルや,「消費者とは無関係」という旧来の立場を堅持することは不可能になっており*2,業界の存続自体が危うい状況である.

つまり,元来「生活とは密着していない」業界であるIT業界もまた,努力を怠ればすぐさま凋落の憂き目に会う宿命を帯びているのである.

*1:日本でしか製造できない,というものは,今現在,基本的に存在しない

*2:俗に「中抜き」と呼ばれる現象