拡大の一途

中国の貧富格差拡大、5年後「赤信号」 政府機関が警告
2005年08月22日23時08分

 中国の貧富の格差がこのまま拡大すれば、2010年には「赤信号」の危機的状況になるとの調査結果を、中国労社会保障省の労働賃金研究所がまとめた。調査チームは政府に対し、農村部の貧困層の収入増が「政府にとって最優先課題」であると提言した。

 22日付の政府系英字紙チャイナ・デーリーが伝えた。貧富の格差をめぐって、政府直属の機関によるこれだけ厳しい警告が伝えられることは珍しく、中国政府の強い危機感を表しているとみられる。

 同紙が伝えた労働賃金研究所の調査結果は、都市と農村部の貧富の格差が拡大を続け、現在では政府が警戒する必要のある「黄信号」の状態になっている、としている。今後、格差是正のための有効な措置がとられなければ、毎年、都市住民の収入は8〜9%増加するのに対し、農民の収入増は4〜5%にとどまると予測。2010年には「受け入れ不可能な格差を意味する赤信号」の状態になり、社会の不安定を招きかねないと警告している。

 調査結果は、貧富の格差拡大は農村内部でも見られ、政府は特に貧しい農民の収入増に早急に取り組む必要があるとした。

 国家統計局によると、04年の都市住民の平均可処分所得は9422元(1元=13.5円)で、農民の純収入2936元の3倍を超えている。

[asahi.com]

5年以内に暴動が起こるであろうという予測は前々からいわれていたこと。何を今更・・・という感は否めない。

興味深い点は、この「心配のタネ」は日本の1950〜60年代の高度成長期の日本経済でも危惧されていた問題点でもあった、ということ。高度成長期に差し掛かる時期、日本政府は農民、そして中小企業経営者および従業員と、大企業従業員の経済格差が拡大するのではないかと危惧していた。しかし、農村部の子息が第2次・第3次産業の担い手となることで、農村部は労働力不足にあえぐ都市部に労働力を提供し、第1次産業に従事する人口そのものが減少、農村部に関する危惧は杞憂に終わる*1。中小企業も大企業から技術・資金支援などを受けながら下請け業務に専念し、収支および技術力を向上させることで生き残った*2。中国も日本の高度成長期と同様の展開を期待するのであろうが、日本と中国の社会構造の間にはきわめて大きな溝が多数横たわっている。その「溝」とは,中国が抱える次のような問題点である.

  1. 農村部の国民の教育レベルに関して、疑問符がつく点(日本の高度成長期において,国内の教育レベルは欧米諸国が驚嘆するほど均質性を保っていた)
  2. チベットを筆頭に,国内勢力として無視出来ない民族を抱える等,日本とは比べ物にならないほどの多民族国家である点(民族紛争の危険性を常に内包している)
  3. 建前上は結果の平等を標榜する「共産主義国家」である点

それゆえ、日本と同一の経過を経て問題が自然解消されることは、まずありえない。内陸部在住の少数民族、低所得農民を中心とした暴動が起こるとともに中国バブルが崩壊、という最悪のシナリオが簡単に予測可能なのである。ここ2,3年が中国社会にとってヤマ場。
それから、日本の高度成長期に政府が抱いた危惧は、時代超えて今現在、確実に具現化し,急激な勢いで進行している問題でもある、ということは非常に興味深いところ。

*1:農村部の過疎化および食料自給率の低下という新たな副作用も無視できない問題となる

*2:だが、バブル崩壊を機に大企業と下請け中小企業の蜜月関係は終焉を迎える