建設業とIT産業の類似点(日本国内限定)

今現在,急成長を続けているIT産業と,一般的には斜陽産業と目されている建設業.「頭脳労働」と「肉体労働」という根幹の部分で大きな違いがあることから,IT業界以外の人には,この二つの産業は全く異質のものであるとの認識を持っているのが普通であろう.しかしながら,産業構造という観点においては,この二つの業界は非常に類似している.ここでは,この"類似点"を大雑把に取り上げてみよう

  1. 業務分野が専門化,細分化されている*1
  2. 業務内容の細分化,分業化,専業化が進んでいるがゆえに,各々の「専門」を得意とする中小企業が多い.
  3. 総合商社的「ゼネコン」や「大手SI業者」が元請業者(頂点)となり,中小・零細企業を下請けとして利用するヒエラルヒーが存在する*2
  4. 公共事業や「e-Japan構想」といった,「国からの肝いり」産業であり,国家機関*3地方自治体に依存してる企業が多い
  5. すべての企業・組織,個人が顧客の対象となる*4
  6. 毎回,「作り上げるモノ」が違う
  7. 見積算定方法は基本的に,人数×作業時間×単位時間当の人件費(+管理費)*5

*1:建設業ならば,土木,海洋,建築といった大分類+舗装,内装,左官,電気設備,衛生設備,空調設備といった小分類がある.IT業界においても,ハードウェア,ソフトウェア,ネットワークといった大分類+セキュリティ,データベース設計,プログラミング,サーバ構築,運用管理,コンテンツ作成等さまざまな小分野が存在する

*2:さらに,中小・零細企業は,現在「人材派遣」や「中国」という更なる下層階級を確保している

*3:電電公社であるNTTグループや,旧国鉄であるJRグループも「お役所」と見ることができる

*4:建設業でいえば,道路や橋梁といったものは国単位だが,住宅や電気,衛生,空調設備に至っては個人レベルのものもある.IT業界も,LGWANといった全国規模の行政システムや光ファイバ敷設等のインフラ整備は国,第1種通信事業者レベルの話だが,メール,Web,セキュリティ関連のものなどは個人レベルのものとなる

*5:建設業の場合の時間の単位は1日,IT業の場合の時間単位は1時間