「IT革命」の本質

ITによって,ライフスタイルや仕事のスタイルが変わる(変わった)と言われる.確かに,商取引にしろ,個人間のコミュニケーションにしろ,10年,20年前では想像も付かないような世界が今,展開している.この点は否定しない.しかしながら,IT革命=コンピュータ/ソフトウェア/ネットワーク業界といった,「IT産業」と目される業界がもたらしたと考えるのは早計である.*1.
産業革命は,蒸気機関と言う「技術」無しでは起こりえなかったが,その本質は「工業化」,「大量生産」,「輸送力の増大」といった「結果」,「社会的影響」の部分であることは異論の余地が無い.また,産業革命を牽引したのは,科学者,技術者ではなく,工業製品を求める消費者たちである.
IT革命を産業革命と同様の見地から客観的に考えてみると,「情報の大量生産/消費」,「情報伝達量の増大」,「情報化」ということになる.言い換えると,IT革命とは,人類が,新たなるコミュニケーション手段,ならびに新たなる情報の表現手段を獲得した,ということが本質であり,「計算機」を「コミュニケーションの道具」へと流用したことがひとつの転換点だったのではなかろうか.そして,この転換点を作り出したのは,「業界」ではなく,「エンドユーザ(米軍や,大学で教鞭を取っていた人々,学生など)」である.

また,今後,このIT革命を牽引するのは,「情報」を求める多くの人々となるのであろう.つまり,「ユーザが本当に求めている情報」を瞬時に提供できればユーザーは満足するのであって,その「提供手段」は,ユーザにとっては関心の対象外なのである.具体的には,このような要求を出してくる「情報の消費者」にとっては,ハードウェアがどうとか,OSがどうだ,とか,IPv6がどうだ,オープンソースがどうだ,といった議論は全く意味を成さないということである.*2

*1:また,コンピュータを使うことが「IT」だと考えることもまた大いなる誤謬である

*2:ユビキタス」社会と言われるものであるが,この言葉は,どちらかと言うと,消費者主体ではなく,情報を「管理する側」の利点が強調されているような気がしてならない