ベンチャー

ちょうど1年前,次のような紙面があった.

大学発ベンチャー」、半数が赤字 経産省調査

 経済産業省の調査によると大学での研究成果をもとに設立した「大学発ベンチャー」の半数は赤字に陥っている。起業から事業化までの期間も一般の中小企業と比べて長い。急増している大学発ベンチャーだが経営面での課題は多いようだ。

 今年3月に大学発ベンチャー362社から聞き取りした結果をまとめた。362社のうち直近の決算で経常黒字だった企業が125社(34.5%)に対し、赤字は190社(52.5%)だった。

 旧科学技術庁が00年に技術系ベンチャー約1300社を対象にした調査では、赤字企業の割合は全体の23.3%だった。これに比べると大学発ベンチャーの赤字企業の割合は多い。起業してから4年後の比較でも、一般の中小製造業では9割以上が事業につなげているのに対し、大学発ベンチャーは約5割だ。

 同省は、「ノウハウを持たない研究者が起業し、営業戦略を練る人材が不足していることが原因の一つ」とみている。

 大学発ベンチャーは、国立大学教員の兼業規制が緩和された97年以降、急増し始めた。経産省によると、03年度末までに設立された大学発ベンチャーは799社に達する。業種別ではIT関連が40.9%と最も多く、バイオ・医療が36.7%で続いている。今年4月、国立大学が法人化されたことで起業に拍車がかかると予想されている。

(2004/08/17, asahi.com 記事より)

同じくつい最近の asahi.com 記事

ベンチャー企業の難しさ

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2005年07月29日14時25分

 公的助成金で新しいタイプの医療廃棄物の焼却炉を試作したMさんは、商品化するため銀行に融資を打診した。「当行が融資するより、ベンチャーキャピタルで投資先を探しているところがあるので、そちらを利用されたらいかがでしょうか」との返事だった。

 「見込みのある開発ですね。投資を検討しましょうか」。ベンチャーキャピタルから連絡があり、商品化の前提となる第2次試作を行い、展示会に出品して反応を見た。

 TVのニュースで紹介されたり、業界紙の記事になったり手応えは大きかったが、Mさんなりの考えのもとで作った焼却炉だったので、専門家からいくつかの改善すべき点を指摘された。

 商品化にこぎつけるには、こんなことも考えておかなければいけなかったのか、と事前の計画の詰めが甘かったことを反省しながら仕事を進めた。数種類の炉を作り、一部は試験的に使ってみましょうと購入してくれるところも出てきた。

 開発は順調だったが、資金の方は潤沢ではない。Mさんは別の投資者をさがして、開発資金をなんとか確保した。少しずつ売れ始めてはいたが、開発資金を回収するまでには至っていない。

 少しずつ仕様の異なった製品への引き合いが多いので、標準品では済ますことができず、いわば多品種少量生産。その分、コストもかかる。

 「技術の蓄積のための投資だと思えばいい」と、ベンチャーキャピタルの側は言ってくれる。しかし、売り上げは思った以上には伸びない。資本金は1000万円から始まり、増資を重ねて今では1億円を超えている。製品在庫を目いっぱい評価すれば、なんとか債務超過は回避できる。

 「先行きは明るい」と、ベンチャーキャピタルの担当者は言ってくれる。ベンチャーの成功者がもてはやされる中、多くは苦労が絶えない。(隠居)

技術,アイディア先行が「ベンチャー」と呼ばれる所以だが,「ベンチャー」を含めた中小企業は,技術者のみならず人事・法務・経理等の総務系と営業(販売)部門にも優秀なスタッフがいなければ生き残ることは厳しい,ということを起業願望者は知るべき(特に,経理と営業の部門は会社の立ち上げ直後から必須).近年,スタッフ部門は人材派遣で賄う,といったアウトソーシングも盛んであるが,人材派遣でやってくる「スタッフ」は,その「処理」のスペシャリストではあっても,「判断」する権限は当然無いし,将来自社に訪れることが予想される重大な問題を回避するだけの先見性も必要とはされない.起業家に求められる能力は「判断」や「決断」,「リスク回避」であって,この部分は人材派遣では賄えない.
仮に「大学発ベンチャー」を単科大学(又は蛸足大学)発のものと総合大学発のものに二分するとすれば,後者の方は,法学部や経済学部出身者といった人材を探しだすことも不可能ではないはずである.にもかかわらず失敗が多い,ということは,スタッフ系の人材の意義を軽視しているとしか考えられない.市場(ニーズ)調査も全く行わずに起業するのが最悪パターンである.技術系の驕り,技術過信といわれても反論の余地は無いであろう.