「会計事務所」の影の機能

ここからが本題である。「税理士」という資格の試験は、一般人*1がいきなり挑戦すると非常に難しいものであるが、税務署員、すなわち税金のプロにとっては「当たり前」のことしか試験に出ないのである*2。これは即ち、税務署 OB は、「税理士」として簡単に独立可能だ、ということを意味する。
そして会計事務所は、そのような税務署OBの税理士を役員に据えていたりする。これはどういうことかと言うと、会計事務所は、顧客である中小企業から会計業務のチェックを請け負うと同時に、税務署への「顔つなぎ役」の機能も果たしているのである。
2年または3年に1度、企業はほぼ定期的に税務査察を受ける(抜き打ちで行われる場合もあるが、それは脱税容疑があるときである) *3。その際、税務署は経理関連の書類を根掘り葉掘り調べ(要はアラ探し)、難癖をつけて税金をふんだくろう*4とする。その査察の際に、「あの会計事務所にチェックしてもらっています」という事実を、会計事務所が押す印鑑を通して税務署員に伝えることが重要なのである。そうすると、微妙にアラ探しが甘くなるのである*5
また、査察はほぼ定期的に行われるとは言え、本来なら予告無しで行われるはずなのだが、企業は会計事務所経由で、「来週あたりに税務署が来るぞ」、と予告されるのである。
つまり、企業は、税務署から手痛い打撃を受けぬよう、一種の保険として会計事務所に毎月、チェックする必要もない月次会計報告書のチェックをお願いするのである*6

*1:少なくても日商簿記2級以上の経理知識は必須だが

*2:何より,税理士試験自体,国税庁が実施しているのだから

*3:ちなみに,倒産寸前のような企業には定期的にはやってこない.税金が払えるような状態ではない,ということは税務署のほうも知っているからである.

*4:言い方は悪いが、脱税をしていない全うな企業側の視点に立てば、このような言い方のほうが適切。ただし、査察に訪れる税務署員側の観点からすると、通常、査察は2、3日、またはそれ以上(企業規模によって異なる)かかるのだが、わざわざ査察対象の企業に出向き,大層な勤務時間を割いておきながら、「所見無し」とは言えないのである。

*5:法律上はあってはならないことだが、現実社会とはそんなものである。

*6:実際、毎月会計事務所に支払う額も、「保険」程度の金額である