「学者馬鹿」に対し,「馬鹿学者」という定義の提案

実際好意的に「学者馬鹿」と呼べる人も数多くいるのだが,中にはこんな教員もいる.

  • 研究実績をあげていない(学会や雑誌に論文を出すことも,本を執筆することも無い)*1
  • 「教育者」としても失格(後進の研究者や研究室に配属された学生に対するサポートなどもしない)
  • 年功序列*2や処世術*3,単なる権力闘争*4で「助教授」や「教授」というポストに就いたと思われる.*5

以上,一応日本ではトップクラスと言われる某・旧帝大の2つの学部(文系,理系各1学部)における10年前+今現在と,数年前の某私学1学部という狭い範囲しか見ていない私自身の主観ではあるが,このような教員が,比率的には少ないが,人数的には結構いる.
私は彼らを「馬鹿学者」と呼びたい.彼らは社会に貢献していない*6にもかかわらず,国民の税金(私学の場合も,私学助成金という税金から捻出される金)を略取している人間なのだから.
このような唾棄すべきエセ研究者,「馬鹿学者」を産むことになった大本の原因は,(今年からは違うが)「国立大学」であれば,教授,助教授,助手というヒエラルヒーを持った「徒弟制度(ギルド制)」になっている,という点と学部や学科,講座といった学内の部署・部局・組織における「教授」や「助教授」といった役職(ポスト)の総数は文部科学省(旧文部省)によって統制されており,ギルドからの独立して別のギルドを作る,という行動が不可能だったためであろう.私学であれば,「学生」という顧客を集めるためには,「研究成果」ではなく,「(研究成果,実績は二の次で,)有名な」研究者を「商品ラインナップ」として揃えておく必要があるためであろう.
近年,各大学では学生による「授業評価」を実施することで,「教育者として優秀か?*7」との観点から教員の客観評価は行えるようになったが,「研究者」としての評価は不透明なままである*8文部科学省は,"COE"という,特定分野の研究内容を提案した大学,研究グループに対し,たいそうな金額の助成金を出す,という仕組みを作り出した*9が,同様に申請→審査を伴う「科研費」の審査も,物言いは悪いが「ある意味適当」だ,との意見があることも否定できないため,この助成金のシステムが今後どのように作用するかが注目すべき点である.

*1:フェルマーの最終定理を証明したワイルズも,6,7年もの期間,論文の投稿も,学会への出席もしなかったようだが,彼の場合は既に実績があり,かつ秘匿性を有する研究を水面下で行っていたという特殊な事情があったための行動であり,当てはまらない.

*2:研究者の数が多い学問領域では研究成果,実績が良くなければそれなりの地位を獲得することはできないが,研究者の数自体が少ない(寂れた)学問領域では,「その分野を研究している」研究者自体が希少価値を持っており,かつ「ポスト」の増減は基本的にないため,年功序列がまかり通る.

*3:学生の就職先である企業と癒着していたり,大学上層部にコネがある,等

*4:白い巨塔」は医学分野におけるこのテーマと,医療ミスの問題を扱ったものであったが,この大学内の権力闘争という問題は,医学分野に限ったことではない.具体例としては,某大学の歴代総長(学長)は,「総合大学」であるにもかかわらず,工学部と医学部出身者しかいないということを挙げることができる.権力闘争の最終形態は「数の論理」であり,教官の多い学部が大学という組織内で権力を持つことになる.

*5:私学の場合は,「マスコミへの露出度」や「知名度」というパラメータが付加されるであろう

*6:医学部,歯学部等に関しては,医療行為を行っているので,まだ社会貢献していると言えるが,その他の学部に関しては,研究か教育のどちらかをまじめに行わなければ,「社会に貢献している」とは言えないはずだ.

*7:thi氏の指摘の通り,学生による評価には疑問が残るのも事実であるし,大学側もその辺は理解しているのだが,大学側としては学生や文科省に対し「ポーズ」も取らなければいけない,という「大人の事情」がある.

*8:国内,海外を問わず,信頼できる雑誌に論文が掲載されたり,著名で国際的な賞を受賞した,と言うのであれば,その研究者は間違いなく優秀であると言えるが,そういう事実がない研究者でありながら,国内の「学会」内部での地位が高いという場合は,研究成果ではなく,権力闘争の結果獲得したものである可能性があるため,「学会内部での地位」と「研究内容の質」は必ずしも比例しない.また,とある国内の「学会」から某かの「賞」を受賞したといっても,「学会」の規模に関してはバラつきがあるため,小規模な学会で獲得した「賞」に実効性があるかどうか,という疑問もある.

*9:私の兄も,COEのチーフ(コーディネータ)として2億の助成金を獲得し,全国の大学を飛び回っているようだ.そのため,最近,全く会う機会が無い